歯髄炎とは

歯髄とは、神経線維と血管で出来ていて、歯に栄養や水分を供給してくれます。
歯髄炎とは、むし歯が進行して歯髄にまで細菌が及んだり、歯ぎしりや事故などで歯髄が刺激されることで歯髄が炎症する病気です。歯髄炎とむし歯は隣り合わせです。

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可逆性歯髄炎
う蝕治療すれば歯髄炎が治る状態。
- う蝕の進行
- C1~C2
- 症状
- 無症状、軽度~重度冷痛
- 治療法
- う蝕除去と充填
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不可逆性歯髄炎
う蝕治療をしても歯髄炎が治らない状態。う蝕による刺激によって歯髄が炎症を起こし、刺激に対して過敏になっている状態。皮膚で例えると日焼けによる皮膚炎。弱い刺激でより強い痛みを感じたり、普段では痛みを感じない、打診(歯を叩く)、咬合により疼痛を感じる。
- う蝕の進行
- C2~C3
- 症状
- 自発痛、軽度~重度冷痛・温熱痛・打診痛・咬合痛
ただし、40%が無症状との報告もあり。 - 治療法
- 断髄 抜髄
C0~1で無症状あれば、適切なケア行えば再石灰化が期待できるので治療適応外。 歯髄炎は重篤な状態であるにもかかわらず、無症状の事もあります。
う蝕の有無、進行度は視診だけでの診断は困難であり、う蝕の進行度を的確に判断するために咬翼法によるデンタルX線撮影とともに、透照法を用いた視診にて診断をします。これは、日本歯科保存学会のう蝕治療のガイドラインに準じた診査方法です。 -
根尖性歯周炎
歯髄もしくは根管治療後の歯に細菌感染が起こり、歯根周囲の骨吸収が起こる状態。肉眼ではわからない事が多いですが、デンタルX線写真で骨の吸収像を認めます。
- う蝕の進行
- C3もしくは、既に根管治療済
- 症状
- 自発痛、打診痛、咬合痛、歯肉腫脹、排膿、初期であればほとんどが無症状
- 治療法
- 感染根管治療
症状別の治療に対する緊急性
- う蝕治療
軽い冷痛 - 断髄
強い冷痛、温熱痛 - 精密歯内療法
打診痛・咬合痛

不可逆性歯髄炎、根尖性歯周炎が
緊急性高いが、無症状も多い
重症(不可逆性歯髄炎)の場合ほとんどが、抜髄となります。
日々のメンテナンス、歯科メンテナンス等での早期発見・早期治療が健康な歯を残すための非常に重要な第一歩です。
※自然治癒する病気ではなく、どんどん状態が悪化していき、根尖性歯周炎になると回りの骨の吸収がどんどん進行していきます。
この吸収が大きくなると治療の成功率が著しく低下します。
生活歯髄温存療法
-Vital Pulp Therapy-とは
先進的な機器を使用した新しい治療
目には見えない歯の根っこの部分、いわゆる歯髄を残しより健康に歯を残す治療です。
現在では外傷による破折で歯髄にまで達する場合や、可逆性歯髄炎までのカリエスに対して歯髄温存療法として応用されています。それより深い場合は抜髄となる。
日本の保険医療における抜髄の成功率は、50%程度と残念ながら良い成績ではありません。
専門的な抜髄の成功率は90%程度ですが、必ず治るという治療方法ではありません。歯髄の状態にもよりますが、生活歯髄温存療法であれば、この抜髄を高い確率(90%以上)で回避し、歯をより長く残すことが可能となります。
歯に耐え切れない痛みが出たとき、従来であれば(もしくは現在でも保険治療であれば)歯の神経をとるという治療が行われていました。しかし最近の研究から「虫歯になったとしても細菌は歯の神経全体には及んでいない。」(Domenico Ricucci.リクッチのエンドドントロジー.東京:クインテッセンス出版; 2017.)ということがわかってきました。
そのため歯を保存するという観点から「精密歯内療法」では感染している神経だけ取り、あとはできるだけ保存するという方法を行っています。これを生活歯髄温存療法といいます。MTAなどを用いるため保険治療では行えませんが、「神経をできるだけ残したい」と思われる方には非常に良い治療法です。
深いむし歯の治療で、生活歯髄温存療法が成功するかどうかは、神経がどれだけダメージを受けているかによります。
■神経のダメージが少ない場合
感染源を取り除き、きっちり封鎖をすることで神経は自己治癒し、健康度を取り戻します。
■神経のダメージが大きい場合
原因を取り除いても生命力が回復できず、死んでいってしまいます。その場合は生活歯髄温存療法は失敗し、結局は根管治療が必要となります。

- 生活歯髄温存療法
- 50,000円(+消費税)
- 3年成功率
- 94~99%
治療回数 | 2~3回 |
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治療期間 | 1~2ヶ月 |
治療時間 | 40~60分 |
使用材料 | MTA |
メリット | 直接歯髄を見れるため確実性が高く、治療回数も少ない |
デメリット | 治療が失敗した場合、次の治療が困難になる可能性がある |
精密歯内療法

歯の根の中の神経や血管など(あわせて歯髄と呼ばれます)が通っている管を根管と言います。 歯髄は根の先端から歯の中に入り、歯の成長発育に重要な役割を果たします。 しかし、成人になり歯が成長したあとは、歯髄がなくても根のまわりからの栄養供給によって歯は生存できます。
歯の根の治療である根管治療(歯内療法とも呼ばれます)は歯髄が炎症や感染を起こした時に必要になります。 原因は深い虫歯、歯の亀裂、外傷などです。
炎症や感染をそのまま放置しておくと、 歯が痛んだり、根の周囲の組織に炎症が広がったり、歯肉が腫れたりします。 場合によってはリンパ節が腫れたり発熱したりと全身的にも影響が出ることもあります。 根管治療によって、これらの症状が軽減したり、治癒したり、予防できたりするのです。
根管治療では、痛んだ歯髄を除去して、根管を注意深く清掃し、根管内の感染を防ぐために根の中に詰め物をします。このように歯髄を除去する治療法を抜髄と呼びます。
感染して壊死してしまった歯髄を取り除く治療です。
すでに細菌に感染してしまっている状態から無菌に近い状態にする治療なので、抜髄と比べると成功率は少し下がります。
再根管治療

以前に根管治療が終了している根が感染してしまった場合には、再根管治療が行われます。この治療は、まず根管内に詰まっている根管充填材を取り除いてから治療を行う為、初回の根管治療と比べて処置の難易度は上がり、成功率も下がります。
様々な根管のトラブル
- ●器具破折
- ●レッジ
- ●パーフォレーション
- ●歯根吸収
- ●根管狭窄・閉塞
根管の再治療が必要となる場合、必ず原因があります。中でもよく経験することが根管以外の部分に穴が開いている「パーフォレーション」や本来の根管とは違うところを削ってしまう「レッジ」です。
これらの治療は専門性が高く技術的にも難しい為、知識や設備が必要不可欠となります。
世界水準の根管治療を
行うために

複雑な形をした根管を治療するには、より精度の高い画像診断装置、根管拡大装置、治療機器、殺菌性のある根管洗浄・充填材料が必要です。当院で採用している歯科治療先進国米国での根管治療では世界中で認められているエビデンスに基づいた治療法を最先端の機材を用いて行います。
30年間の予防メンテナンスを行なわれた患者で抜歯になった原因の多くはは歯根破折です。
歯根破折のほとんどが、歯内治療(神経を取る)が行われた歯に発生します。
これは歯内治療を行われる際の歯質削除、歯内治療後の不適切な補綴治療が原因となります。
歯周病、う蝕以外で抜歯原因となるものは、破折になります。その破折もきちんとした歯内療法、補綴治療を行えれば、ほとんどが破折することなく機能させる事が可能です。
スウェーデンの研究では、30年間きちんとしたメンテナンスを受けた患者を対象とした研究では、抜歯になった患者の多くの原因は破折であったと報告されています。
日本においては、まだまだ歯周病、う蝕が多い現状ですが、適切なメンテナンスを行っていけば、抜歯原因の多くは破折となります。
当院では、この破折予防のためにも歯内療法には特に力を入れて治療に取り組んでいます。
この歯内療法における、世界レベルの治療を行うための当院の機器、機材、材料について紹介します。



治療内容は、精度の高い一般的な根管治療から保険診療では行うことのできない難症例(破折ファイル除去、パーフォレーションリペア、レッジ修正、生活歯髄温存療法など)まで及びます。精密歯内療法を行っても予後が不確実などの理由から治療効果が乏しい場合は、「歯科用CBCTと歯科用マイクロスコープを用いたマイクロサージェリー」もしくは「意図的再植術」を行います。
これ以上できないほどの技術を投入することにより「1本の歯にこだわり、1本の歯を最大限保存する」、これが精密歯内療法の神髄です。

歯内療法の成功には、無菌的な処置が大事です。しかしお口の中には無数の細菌が存在するため、治療中の感染防止策が不十分であれば、十分な治療効果が期待できません。そのため治療中の歯の中に唾液や細菌が入らないように歯の周りにゴムのシートを張って防御する必要があります。これをラバーダム防湿と言います。

従来、歯根を削って治療していた歯内治療も、最新のテクノロジーであるYSGGレーザーを用いて最小限の切削での治療が可能となりました。
(硬組織から軟組織まで)幅広く様々な治療に対応できる最先端テクノロジーを兼ね備えたYSGGレーザーで治療いたします。使用用途は多様でありますが、当院では主に精密歯内療法に使用します。
従来の歯内治療の主流は洗浄液をかけてじゃぶじゃぶ洗い流すイメージですが、最先端の歯内治療ではレーザーを使用します。レーザーは爆発させるほどのパワーで洗浄が出来ます。
違いとして、削るのが主体だった歯内治療は、削りすぎによる歯根破折のリスクがありますが、YSGGレーザーのテクノロジーを用いた洗浄方法によって治療の成功率を変えることなく、歯質温存が可能となります。
総合的には根管治療は95%程度
成功できる水準まで達しています。
かつて残せなかった歯をも高い成功率で
保存することが可能になっていますので
お困りの方はお気軽にご相談ください。
歯内療法比較
専門的歯内療法 | 当院の保険歯内療法 |
一般的な歯内療法 | |
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治療にかけられる時間 | 90分~/回 | 20~30分/回 | 10~20分/回 |
治療回数 | 1~3回 | 2~5回 | 数回~数か月 |
ラバーダム | 使用 | 不使用が多い | 不使用が多い |
NiTiファイル | 新品使用 | 滅菌再使用 | 不使用が多い |
レーザー洗浄 | 使用 | 不使用 | 不使用 |
CT | 使用 | 適応症に限り | 不使用 |
マイクロスコープ | 使用 | 必要に応じて | 不使用 |
ファイル破損等の偶発症 | 起こりにくい | 起こることがある | 起こることがある |
歯根破折 | 起こりにくい | 起こることがある | 起こりやすい |
初回治療成功率 | 90%以上 | 不明 | 50~60% |
費用 | 7~12万円(+消費税) | 保険点数に準ずる | 保険点数に準ずる |
根管治療料金
●抜髄または初回感染根管治療
大臼歯 | 95,000円(+消費税) |
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小臼歯 | 95,000円(+消費税) |
前歯 | 70,000円(+消費税) |
●再根管治療
大臼歯 | 120,000円(+消費税) |
---|---|
小臼歯 | 120,000円(+消費税) |
前歯 | 90,000円(+消費税) |